「膠原病(とくにループス腎炎)」の記事一覧

膠原病(特にループス腎炎)に関する治験について

Aurinia製薬株式会社の新薬、Voclosporin(ボクロスポリン)は第3相への治験をスタートさせています。ボクロスポリンはループス腎炎の悪化を食い止め、腎機能改善し寛解を目的とした薬で、第2相bの治験では、統計的に高い寛解率を記録したが13名の被験者が死亡し、そのほとんどはアジア人(13名中11名)でした。 これによりAurinia製薬株式会社の株価が急落しましたが、10名が低い投与量で、1名がプラシーボグループで亡くなったことから治験薬との因果関係を否定し、第3相治験に進んでいます(1. Zacks Equity Research (2016) Aurinia (AUPH) Stock Falls on Poor Phase II Lupus Study Data)。この背景には、第2相bでボクロスポリンが腎臓の悪化を食い止め、症状の改善が多くのループス腎炎患者に見られたことが大きく関わっています(2. Joana Fernandes, PhD (2017) Aurinia Pharmaceuticals Starts Phase 3 Trial of Voclosporin as Lupus Nephritis Treatment)。さらに世界中に5億人の全身性エリテマトーデス患者がいて、その中の40%から60%がループス腎炎を発症するといわれる中、FDA(アメリカ食品医薬品局)とEMA(欧州医薬品庁)は未だ、ループス腎炎の療法を認可していません(3. Steven Goldman (2016) Aurinia Pharmaceuticals: Large Potential Return)。

膠原病、及びループス腎炎の治療には一般的にステロイド薬が使われてきましたが、免疫を低下させ、骨粗鬆症を誘発するなどの副作用があります。ボクロスポリンはCNI(Calcineurin inhibitors、カルシニューリン抑制剤)のクラスに属します。カルシニューリンは免疫T細胞を活性化させ腎臓にダメージを与えます。このクラスには他に、cyclosporine(シクロスポリン)と tacrolimus(タクロリムス)が認可されていますが、特許が失われたこととループス腎炎の治療薬としては認められていないため、日本以外では使われていません。シクロスポリンとタクロリムスはセルセプト/ミコフェノール酸モフェチル(CellCept ®/ MMF)のコンビネーションにステロイドを併せた薬は、腎移植を受けた患者に投与されており、90%以上の患者はこの薬を使い続けています。日本では2008年から、タクロリムスとセルセプト/ミコフェノール酸モフェチルにステロイド薬を併せた薬をループス腎炎の治療薬に認可しています。 このアプローチは複数ターゲット治療(a multi-targeted therapeutic approach、MTT)と呼ばれ、この薬を使用したループス腎炎患者の寛解率は50%を記録しています。10年に渡る研究結果では、この薬を用いてループス腎炎を寛解した患者には早い段階で、蛋白尿の減少が見られました(3)。

ボクロスポリンもタクロリムスと似たような効果がありますが、より安全で副作用も少ないと言われています。Aurinia製薬株式会社も複数ターゲット治療アプローチを採用し、ボクロスポリンとセルセプト/ミコフェノール酸モフェチルにステロイド薬を併せた薬で臨床治験を行っています。 ボクロスポリンとシクロスポリンは構造が似ていますが、ボクロスポリンのアミノ酸1残基が改造されています。ボクロスポリンとシクロスポリンは乾癬の研究治験で比較されましたが、シクロスポリンが脂肪率をより高くすることが認められました。ループス腎炎患者の大半が循環器疾患で亡くなっていることから、ボクロスポリンの方がループス腎炎の治療に向いていると言えます。また日本の研究結果からタクロリムスを使用した患者の15%がブドウ糖不耐性を発症しましたが、ボクロスポリンではこの副作用は起きないと言われています。 またボクロスポリンはシクロスポリンの4倍も効果的であること、シクロスポリンに見られる副作用がボクロスポリンには見られないこと、シクロスポリンとタクロリムスが、患者の体重によって薬量が変わるのに対し、ボクロスポリンは一定の薬量であることから、より簡易に処方が出来る点で優位であると考えられます(3)。

第2相bでは、クリニカル診断と生検により比較的重いループス腎炎患者、20か国で265名が治験に参加し二重盲検でランダムに3グループに分けられました。1つ目は低いボクロスポリン量(23.7mg)を1日2回服用、2つ目は高いボクロスポリン量(39.5mg)を1日2回服用、3つ目はプラシーボグループでした。どのグループもセルセプトとステロイド薬はコントロールベース薬として与えられました。2012年FDAに許可されたプロトコルによると、ボクロスポリンの服用によって、著しい蛋白尿の減少が、少量のステロイド薬でキープ出来ることから、どのグループも徐々にステロイド薬は減らされるよう、デザインされています。48週目の研究結果では、低いボクロスポリン量を服用していたグループの48%、高いボクロスポリンを服用していたグループの40%、プラシーボグループの24%に腎臓の悪化停止が見られました。残念ながら、この治験では13名の方がお亡くなりになりましたが、低いボクロスポリンを服用していたグループの結果は、副作用も少なくループス腎炎の治療に適すると思われ、FDAより迅速承認薬に認定されています(3)。

2016年5月にAurinia製薬会社は、日本の医薬品医療機器総合機構と協議をし、良好な第2相bの結果から、健康な日本人ボランティアでボクロスポリンをテストする事を発表しています。このテストの目的は、安全性をアピールすると同時に、第3相治験に日本人のループス腎炎患者を含めることが出来れば、日本だけを対象にした研究治験の実施を省くことが可能になるのではないかということです(3)。

第3相治験は、52週間の二重盲検でプラシーボグループを含め、世界的に約320人の生検により確定されたループス腎炎患者が参加する予定です。患者はランダムに、23.7㎎のボクロスポリンに セルセプトとステロイドを併せた薬を一日2回服用するグループとプラシーボにセルセプトとステロイドを併せた薬を一日2回服用するグループに分けられます。ステロイドの量は徐々に減らされます。 24週目に行われる効果査定では、尿とクレアチニン比例、腎臓機能、10㎎以下のプレドニゾロン(ステロイド剤)が保たれているか、緊急時の薬が処方されたかについて査定されます(4. Celia Economides、Aurinia Pharmaceuticals, (2016) Aurinia Announces Plans for Single Phase III Clinical Trial for Voclosporin in the Treatment of Lupus Nephritis Following Successful Completion of End of Phase II Meeting with FDA)。第3相治験は、2018年内か2019年の初めに終了するとみられ、全て順調に行けば、2019年内にFDA、ヨーロッパ、日本または、他のアジアの国々で認可されるかもしれません(3)。

 

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