「髄様癌」の記事一覧

髄様癌に関する治験

 

一般的に髄様癌というと甲状腺髄様癌を指します。大腸に発生する髄様癌もありますが、臨床病理像と発生機序に特徴があり特殊型として扱われているため、認知度はそれほど高くありません。

 

甲状腺がんの推計患者数は約2万9000人で9割は分化型、髄様癌は全体の2~3%です。甲状腺髄様癌は、一般的な他の甲状腺癌と比べ予後がやや悪い傾向にあり、約25%が遺伝性であると考えられています。切除可能であれば甲状腺切除術によって治療が行われますが、そうでない場合は従来の化学療法では甲状腺髄様癌を適応にもつ薬剤が限られているため、分子標的治療薬による革新的な治療法が望まれています。2018年1月時点で、本邦で髄様癌に適応があるのは最後に述べるカボザンチニブを除く以下3つの薬剤です。

 

ソラフェニブ

マルチキナーゼ阻害剤ソラフェニブは、本邦にて2014年6月に分化型甲状腺癌に対する初めての分子標的薬として承認されました。ネクサバール®(バイエル薬品) はこれ以来、進行した甲状腺癌に対する治療の選択肢を広めてきましたが、2016年2月にはさらに甲状腺髄様癌の承認を取得したことにより、「根治切除不能な甲状腺がん」へと適応を拡大しました。これは、放射性ヨウ素(RAI)治療抵抗性の根治切除不能な分化型甲状腺癌及び低分化癌患者を対象とした日本人を含む国際共同第Ⅲ相臨床試験において,プラセボに対して有意差をもってPFS(無増悪生存期間)を延長することが示されたこと、また,局所進行あるいは転移性の甲状腺髄様癌患者及び甲状腺未分化癌患者を対象とした国内第Ⅱ相臨床試験において、 既承認の疾患とほぼ同様の安全性プロファイルが認められ,甲状腺髄様癌での有効性(奏効)が示唆されたことによります。この度の適応拡大は、日本独自の取り組みであり、ネクサバールの米国添付文書における甲状腺への適応は「 放射性ヨウ素治療抵抗性の局所再発又は転移性の進行性分化型甲状腺癌(DTC)に対する治療 」です1)。

 

これまで以上に患者さんの進行や再発の不安に対する希望となり、甲状腺癌患者さんの更なる治療の発展に貢献することが期待されています。

 

レンバチニブ

マルチキナーゼ阻害薬(血管内皮増殖因子受容体1,2,3、線維芽細胞増殖因子受容体1〜4,血小板由来増殖因子受容体、RET、および KITを阻害)であるレンバチニブは、2015年5月、根治切除不能な甲状腺癌を適応症として本邦にて初めて承認されました。レンビマ®(エーザイ)の適応症は必ずしも分化型に限定されていないため、髄様癌、未分化癌を含みます。

甲状腺髄様癌に対する本剤の有効性は 2 つの第Ⅱ相試験(外国 201 試験及び国内 208 試験)のデータから得られています。

 

外国 201 試験は、甲状腺髄様癌又は放射性治療難治性の分化型甲状腺癌を対象とし、本剤 10mg 1日2回(BID)又は 24mg 1日1回(QD)における有効性を主要評価項目とした試験です。全 117 例中、甲状腺髄様癌の患者59例全てQDでの投与でした。データカットオフ時点で、甲状腺髄様癌では部分奏功は 36%、安定は 44%、23週以上の安定は 29%に認められましたが、分化型甲状腺癌、甲状腺髄様癌ともに完全奏功は認められませんでした。

 

国内208試験では、分化型甲状腺癌、甲状腺髄様癌、甲状腺未分化癌を含む甲状腺癌を対象に本剤24mgを1日1回投与した場合の安全性・有効性を評価しました。その結果、全43例のうち、甲状腺髄様癌患者(有効性解析8例)において、完全奏功0例、部分奏功1例(12.5%)、安定7例(87.5%)、病勢進行0例という結果でした。全例において何らかの有害事象及び副作用が認められました。

43 例中 31 例(72.1%)に発現したGrade3または4の有害事象は、甲状腺髄様癌の 安全性解析症例9 例のうち7例(77.8%)でした。重篤な有害事象は 43 例中 19 例に発現し、そのうち甲状腺髄様癌の患者は 5 例でした。有害事象による死亡例は 2 例あり、そのうち1例は甲状腺髄様癌でした。全43 例において、治験薬の減量となった有害事象 42 例のうち9例が甲状腺髄様癌、 休薬に至った有害事象は 25 例中5例が甲状腺髄様癌 でした。なお、中止に至った有害事象はありませんでした。

 

このように、甲状腺髄様癌を被験者に含む臨床試験にてレンバチニブの安全性・有効性は示されているもの、少数例のデータであることから、本剤の適応となる患者の選択においては臨床成績を熟知した上で治療開始することを「使用上の注意」にて注意喚起しています。

 

 

バンデタニブ

2015年11月にバンデタニブがカプレルサ®(サノフィ)として根治切除不能な甲状腺髄様癌を適応症として薬価収載されました。

甲状腺髄様癌患者を対象とした第II相臨床試験(試験08,68)により本剤の忍容性、抗腫瘍効果が確認されました。その後、海外23カ国で実施された二重盲検ランダム化プラセボ対照第 III相試験(試験58)でも、同じく甲状腺髄様癌患者を対象とし、主要評価項目である無増悪生存期間の統計学的に有意な延長が認められました。これにより、FDAやEMAの承認を得、国内では日本人における安全性、有効性を評価するために、甲状腺髄様癌患者を対象に非盲検第I/ II相試験(試験98)が実施されました。日本人14例に本剤300mg/日を投与し、有効性解析対象集団(13例)における客 観的奏効率は38.5%(5/13例)でした。この結果は、海外第III相試験とほぼ同様であると判断されたため、海外データが日本人にも適用できると考えられ、本邦での承認に至りました。

 

カボザンチニブ

MET、VEGFR2、RET阻害薬のカボザンチニブ(本邦未承認)は、甲状腺髄様癌の適応をもち、海外ではCometriq®の名前で販売されています2)。海外第III相ランダム化プラセボ対照臨床試験(EXAM)では、進行性かつ転移性甲状腺髄様癌の患者を対象に、本剤の安全性・有効性を評価しました3)。被験者は330名で、 主要評価項目であった無増悪生存期間は11.2ヶ月(プラセボは4.0ヶ月)でした。部分奏功が見られたのはカボザンチニブ群のみで27%、客観的腫瘍縮小効果期間の中央値はカボザンチニブ群14.7ヶ月でした。全生存期間中央値はカボザンチニブ群26.6ヶ月、プラセボ群21.1ヶ月であり統計学的な有意差は見られませんでした。

 

 

 

 

 

カボザンチニブ群の25%以上の患者に発現した有害事象は、下痢、口内炎、掌足底感覚異常症、体重減少などでした。また、検査値異常は、AST上昇、ALT上昇、リンパ球減少、ALP上昇、カルシウム減少などでした。死に至った有害事象はカボザンチニブ群の6%に発現し、原因は出血、肺炎、敗血症、婁などでした。プラセボでも5%の患者に死に至った有害事象は発現しており、敗血症、肺炎、病状悪化でした。カボザンチニブ群、プラセボ群それぞれ79%、9%の患者で投与量の減量が行われました。

 

服薬中止に至った有害事象は、カボザンチニブ群、プラセボ群それぞれ16%、8%発現しました。試験中止に至った有害事象は、低カルシウム血症、リパーゼ上昇、掌足底感覚異常症、下痢、疲労感などでした。ベースラインの値に関わらず、カボザンチニブ群の57%、プラセボ群19%に初回投与後に甲状腺刺激ホルモン(TSH)の上昇が見られました。なお、カボザンチニブ群の92%が甲状腺摘出しており、89%が本剤初回投与より以前にホルモン補充療法を受けていました。

 

 

日本では2017年に武田薬品が Cometriq®カプセル(20mg、80mg)を販売しているExelixis社と、日本におけるカボザンチニブ の独占開発・販売権に関する契約を締結しています。本契約についての武田薬品のプレスリリースでは、進行性腎細胞癌の適応を有するカボザンチニブ製剤であるCabometrix®錠(20mg、40mg、80mg) 4)についてのみ述べられているため、髄様癌の適応のあるカプセル剤の取り扱いについては述べられておらず、残念ながら現時点では髄様癌の4つ目の治療薬となりうるか不明です。

 

 

 

 

1) https://www.accessdata.fda.gov/drugsatfda_docs/label/2017/021923s018lbl.pdf

2) https://reference.medscape.com/article/282084-medication#2

3) https://www.accessdata.fda.gov/drugsatfda_docs/label/2018/203756s005lbl.pdf

4) https://www.accessdata.fda.gov/drugsatfda_docs/label/2016/208692s000lbl.pdf

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